【直流ワールドを広めよう!】第1回 直流がエコなわけ

先日、家庭におけるエコ対策についてのアンケート調査結果(※)を見かけました。
調査結果によると、家庭内のエコ対策として最も重視するのは「節電」(61.2%)とのこと。
がんばったら電気料金として目にみえるのも理由のようです。
確かに経済的な効果があると嬉しいものです。
※アサヒグループホールディングスホームページより

多くの人が「電気の無駄をなくす=エコ」と考えている。
そして、エコを意識することはあたりまえの時代。
この連載では、電気とエコ、そして私たちが暮らしの中で出来ることを教わるために、東北大学大学院環境科学研究科の田路和幸教授(以下、田路先生)にお話を伺います。

田路先生は、「微弱エネルギー蓄電型エコハウスに関する省エネ技術開発(環境省)」「スマートビルDC/ACハイブリッド制御システム開発・実証(経済産業省)」等において、日本をリードする直流給電による研究開発プロジェクトを進めてこられました。

私たちの暮らしの中で、直流と交流を意識することはあまりないように思います。

学校の授業ではいつ頃習うのでしょうか。
先日、区の図書館で教科書の展示が開催されていたので見に行ってきました。
すると中学2年生の理科の教科書に登場していましたよ。

辞書によると、直流は常に一定方向に流れる電流、交流は一定の周期で大きさと向きが交互に変化する電流、とあります。

日本では、電力会社から一般家庭などに供給されるのは交流、乾電池や蓄電池、太陽電池など各種電池で発生するのは直流です。

 

田路先生:
「日本には様々な分野において世界をリードする省エネ技術がある。省エネ家電は、必ずインバータ内蔵で、機器の中で交流を一度、直流化することで省エネを可能としている。電力会社から送られてくる電力が交流であっても、直流を利用することで省エネが可能になっている。
モーターの入っている冷蔵庫、エアコンなどはインバータで制御されているし、最近では直流モーター(DCモーター)を利用した掃除機や扇風機も市販されている。」

▲直流モーターを利用した扇風機:下の方にACアダプタの挿しこみ口がある(写真右)

田路先生:
「東日本大震災以降、太陽光パネル、蓄電池、電気自動車、燃料電池自動車、パソコン、LED照明、液晶テレビなどが設置されたエコハウスが注目された。このハウスに導入される電気機器の内部は直流で稼働している。
さらに、お湯と電気を同時に作る燃料電池やガス発電の機器も一般に普及し、そのエネルギーの利用効率は95%を超えていて、これらの機器でつくられる電気も直流。このように、身の回りの家電は、ほとんどのものが直流で動いている。
実は私たちの社会は直流ワールドになっていると言える。」

▲ノートパソコンのACアダプタを触ると温かいのは、電気エネルギーが熱になって逃げているから。これが変換ロス。

田路先生:
「身近なところでも交流から直流への変換ロスは生じている。平均的な家庭では、夏冬のもっとも電力を必要とする季節でも1日20kWhの電力量があれば生活ができる。直流化により、実際にどれくらいの電気使用量が減少するかを見積もってみると、直流化するだけで少なくとも10%以上の省エネが生活スタイルを変えることなく達成できることがわかる。」

左:「家庭部門機器別電気使用量の内訳」(資源エネルギー庁のウェブサイトより)
右:冷蔵庫、照明、テレビ、エアコンを直流化した場合

田路先生によると、電気使用量の多い上位4つの電気機器を直流化した場合、それぞれの現在の電気使用量に対して、冷蔵庫とエアコンはインバータへの交流-直流変換のロス分として5~10%程度、照明は蛍光灯をLEDに替え、直流化することで50%以上、テレビやパソコン、携帯電話などのデジタル機器は消費電力が小さいために、変換効率の悪い交流-直流変換器が使用されていて、その直流化で20~30%程度の省エネが見込めるとのこと。

田路先生:
「直流化の利点は、特に太陽光発電と組み合わせることで威力を発揮する。太陽光発電は直流であり、それを変換することなく利用できる直流給電と直流機器は、発電した電気を高効率で利用できる。しかし、一般家庭や商業施設等で導入されている太陽光発電は系統連携され、交流に混ぜ込んで利用される。そのためデジタル機器を使えば、単純に考えても直流-交流、交流-直流変換を2回行うため、少なくとも20%の変換ロスが生じる。」

この変換ロスの大きさを日本全体で考えたら…
照明のスイッチをこまめに消すことだけが「電気の無駄をなくす=エコ」ではないようです。

太陽光発電を導入する際、系統連係して売電することで初期投資を回収できると言われたりもしますが、直流-交流の変換ロスのことを考えると、系統連係せずに直流のまま自分で使う方が望ましいと言えます。

私たちの暮らしが、再生可能エネルギーの電気を直流のまま使う「直流ワールド」になったら、日本全体がかなりエコになりそうです。

次回は、非常時にも大活躍のコンパクトな発電&蓄電システムが稼働している建物のお話を伺います。

(つづく)

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*予告

第2回(7月26日)
非常時も大活躍の太陽光発電&蓄電システム

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田路和幸(とうじ かずゆき)

 

理学博士/東北大学大学院環境科学研究科教授(2010年度から4年間、研究科長)/NPO法人環境エネルギー技術研究所 理事長

ナノ素材とそのエネルギーデバイスへの応用に関する研究により2008年に文部科学大臣表彰 科学技術賞

「微弱エネルギー蓄電型エコハウスに関する省エネ技術開発(環境省)」「スマートビルDC/ACハイブリッド制御システム開発・実証(経済産業省)」「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト(文部科学省)」などエネルギー関連の研究開発プロジェクトのリーダーを務める。

▽こちらの本にも田路先生が直流ワールドについて書いておられます!