【直流ワールドを広めよう!】第2回 非常時も大活躍の太陽光発電&蓄電システム

日本をリードする直流給電による研究開発プロジェクトを進めてこられた田路先生に、電気とエコ、私たちが暮らしの中で出来ることについて教わります。

第1回では、私たちの暮らしの中の直流と交流の変換ロスについてのお話を伺いました。
第2回では、変換ロスの無駄を解決しながら、震災の時に大活躍だったコンパクトな発電&蓄電システムが稼働している建物のお話を伺います。

東北大学大学院環境科学研究科には、震災の1年前にできたEcollab.という高気密、高断熱の木造校舎があります。
そこには約10kWhという当時では大型のリチウムイオン2次電池(以下、LiB)の蓄電システムと約6kWhの太陽光パネルが設置されました。

田路先生:
「交流と直流の変換ロスの無駄を解決するためには、直流給電とLiBを利用する必要がある。LiBの特徴は、蓄電と放電に際してのエネルギー変換ロスが無視できるほど小さいこと、そして、蓄電した電気が自然となくなる自己放電が極めて小さいこと。これは鉛蓄電池やニッケル水素二次電池などのほかの蓄電池にはない特徴。
このような特徴のあるLiBを交流給電で利用すると、LiBへの電気の入出力の際、交流-直流変換により20%程度のロスが生じる。」

田路先生:
「エネルギーの変換ロスをなくす観点から太陽光発電と蓄電池は直流連結が必要となるが、現在市販されている太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステムの中に、そのような観点でつくられたものがどれくらいあるか疑問。
再生可能エネルギーを交流電力に混ぜ込んで利用することはあまりにも電気のロスが大きすぎるし、おそらく太陽光発電でつくった電気の半分程度しか使えないと推測する。」

▲発電した直流の電気を直流のまま使うライフスタイルをコンセプトに設計されたDCライフスペース。
実証実験等において中心的な空間となった言わば直流ワールドの元祖。
(写真:東北大学大学院環境科学研究科 Ecollab.パンフレットより)

 

田路先生によると 「太陽光発電の電力は、直流ワールドの中で地産地消するのがもっとも利用効率が高い。つまり太陽光発電の電力は、直流でLiBと連結して安定化し、直流で利用するのが一番効率的。」とのこと。

では、Ecollab.では、どのような工夫がされているのでしょうか。

太陽の光は雲にさえぎられたりして強さがかわります。
天気によってテレビがついたり消えたりするのは困るので、蓄電池を入れます。

蓄電池からは一定の大きさの電気を出すことができます。
電気を貯めながら使うことができるので、太陽光パネルも蓄電池も小さくてすむというわけです。
(イラスト:東北大学大学院環境科学研究科「先取りしたい2030年のくらし」より)

田路先生:
「震災の時、Ecollab.は、30名を超える帰宅困難者の避難場所として利用した。自家発電による非常用電源も数時間でなくなり、公的なエネルギー供給の目途が立たない中、Ecollab.の蓄電システムからのエネルギー供給で3日間以上、情報機器やLED照明が常に使え、わずかな燃料で非常食を作る生活ではあったが、安心感のある生活環境が確保できた。そして、このようなエネルギー制約を経験したことで、いかにエネルギーを無駄に使って生活しているか、ということに気付いた。


左:震災直後のEcollab. DCライフスペースの様子
中央:避難所に設置された太陽光パネル(石巻市北上町十三浜大指地区)
右:避難所で充放電システムを設置する田路先生
(写真:東北大学大学院環境科学研究科 Ecollab.パンフレットより)

田路先生:
「エネルギーは安価にいつでも手に入るという環境に慣れすぎているのかもしれない。またエネルギーはマスプロ的に社会が提供してくれることに甘え、自分でつくることも忘れたことが、エネルギーの無駄遣いを進めた原因かもしれない。このエネルギーの無駄使いが地球温暖化問題を引き起こしているのも事実である。現在の右肩上がりのエネルギー消費量を削減するには、少しでも自分でエネルギーをつくり、それを無駄なく地産地消する心構えが必要。」

▲石巻の避難所に貸し出されたEcollab.の蓄電池

太陽光パネルと蓄電池は、石巻の避難地域に貸し出され、1ヶ月以上にわたって電力供給の断たれた地域に電気を供給し続けたそうです。

震災以降、一般家庭向けの蓄電池を販売するメーカーが増えましたが、Ecollab.には、震災前からエコで非常時も安心のコンパクトな発電&蓄電システムがありました。

そして、Ecollab.は、太陽光発電した直流の電気を直流のまま地産地消で使う「直流ワールド」でした。

▲Ecollab.横に咲いているヤマユリ

次回は、田路先生のお部屋に伺い、進化し続ける直流ワールドを見せて頂きます。
DIYでつくられた直流ワールドには、直流化のヒントが詰まっています。

(つづく)

「連載:直流ワールドを広めよう!」へのご感想・ご質問など、皆様からのメッセージをお待ちしています。
編集部  info@sftee.or.jp

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*予告

第3回(8月2日)
DIYで出来る?!直流ワールド

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田路和幸(とうじ かずゆき)

理学博士/東北大学大学院環境科学研究科教授(2010年度から4年間、研究科長)/NPO法人環境エネルギー技術研究所 理事長

ナノ素材とそのエネルギーデバイスへの応用に関する研究により2008年に文部科学大臣表彰 科学技術賞

「微弱エネルギー蓄電型エコハウスに関する省エネ技術開発(環境省)」「スマートビルDC/ACハイブリッド制御システム開発・実証(経済産業省)」「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト(文部科学省)」などエネルギー関連の研究開発プロジェクトのリーダーを務める。

▽こちらの本にも田路先生が直流ワールドについて書いておられます!