【直流ワールドへようこそ!】第7回 「再エネ賦課金」から考えるエネルギーのこと

第7回は「電気ご使用量のお知らせ」を見ながら、エネルギーのことについて考えます。

震災以降、政府は、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取ることを約束する制度「固定価格買取制度(Fit)」を発表しましたが、その財源は再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)として、私たち電気利用者が負担しています。

知らなかった!という方もいらっしゃるかもしれません。

編集部スタッフの「電気ご使用量のお知らせ」(8月分)にもしっかりとありました。

再エネ発電賦課金 554円。
ご請求予定額は5,675円ですので、実に10%程度を占めています。

再エネ賦課金の計算式は 電気の量(kWh)×2.64円/kWh。
電気使用量に比例しています。

この再エネ賦課金は、固定価格買取制度(Fit)が始まった平成24年度には0.22円/kWhでしたので、10倍以上に上昇しています。

H24年度 0.22円/kWh
H25年度 0.35円/kWh
H26年度 0.75円/kWh
H27年度 1.58円/kWh
H28年度 2.25円/kWh
H29年度 2.64円/kWh

再エネ賦課金収入実績はH27年度で1兆3,168億円(※1)とのこと。

H24年度 1,302億円
H25年度 3,190億円
H26年度 6,360億円
H27年度 1兆3,168億円

政府のエネルギー基本計画によると、今後、再エネ比率を増やす計画となっていますが、それにともない、「再エネ賦課金」も上がり続けると言われていて、2030年の再エネ比率22~24%達成の前提として、買取費用は3.7兆円~4兆円(※2)になる想定です。

一方、海外の再エネ比率を将来の目標値も含めて見てみると・・・

▲経済産業省の資料をもとに作成した主要国の再生可能エネルギー比率と各国の目標(※3)

グラフによると、2014年の再エネ比率はスペインがトップで40.3%ですが、将来の目標は、ドイツ50%、イギリス30%、フランス40%、アメリカは80%です。

再エネには水力(ダム)も含まれます。

さて、現在の日本の電源構成は、そもそもほぼ石油だけだったのが、オイルショック後の石油代替政策により、約30年かけて石炭、LNG(液化天然ガス:Liquefied Natural Gas)、原子力が徐々に増加して現在の「エネルギーミックス」の考え方に至っています。

▲日本の電源構成の推移(※4)

 

平成26年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画(※5)の最後の方にこう書かれています。
「国のみがエネルギー政策の立案・運用に責任を持った形にするのではなく、自治体、事業者、非営利法人等の各主体がそれぞれ自らの強みを発揮する形でエネルギー政策に関与している実態を踏まえ、これらの主体を新たに構築していくコミュニケーションの仕組みをしっかりと位置付け、責任ある主体として政策立案から実施に至るプロセスに関与していく仕組みへと発展させていくことが重要である。例えば、多様な主体が総合的に議論する枠組みへの実現に向けて、まずは全国の自治体を中心に地域のエネルギー協議会を作り、多様な主体がエネルギーに関わる様々な課題を議論し、学びあい、理解を深めて政策を前進させていくような取組について、今後、検討を行うこととする。」

また、資料の最後に添付されている参考資料には、「電源構成についての考え方」として、「あらゆる面(安定供給、コスト、環境負荷、安全性)で優れたエネルギー源はない。」とあります。

近い将来、エネルギーに関して様々な関わり方ができるようになるまでに、私たちひとりひとりが、エネルギーへの関心を持ち、学ぶことで、納得感のあるエネルギーの在り方にたどりつけるのではないでしょうか。

田路先生:
「再生可能エネルギーの比率が増えることで環境には貢献するけれど、私たちの経済的な負担も増えます。省エネの普及に向けては、大型の再生可能エネルギーを導入するよりも、自己消費分の省エネを導入する方が、経済的な負担も軽く、環境にも貢献する方法と言えるのではないでしょうか。」

再生可能エネルギーの普及と言っても、大型なのか自己消費分だけの導入なのか、経済的な負担はどうなるのかなど、知らないことだらけです。

バタバタとした日々の暮らしの中では、大きなエネルギーのことまでは、なかなか意識が向かわないというのが正直なところ。

身近な電気のことを入り口にすることで、少しずつでもエネルギーのことについて理解を深めてゆければと思います。

(つづく)

※1・・・経済産業省 「賦課金単価等の推移について」より
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/saisei_kanou/pdf/008_s01_00.pdf

※2・・・経済産業省 調達価格等算定委員会(第23回)資料:「FIT法改正を踏まえた調達価格の算定について/平成28年10月資源エネルギー庁」より
http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/pdf/023_01_00.pdf

※3・・・経済産業省 再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題に関する研究会(第1回)資料3「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題について/平成29年5月25日 省エネルギー・新エネルギー部」より
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/saisei_dounyu/pdf/001_03_00.pdf

※4・・・「各電源の特性と電源構成を考える上での視点/資源エネルギー庁 平成27年3月」よりhttp://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/005/pdf/005_05.pdf

※5・・・エネルギー基本計画
http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/140411.pdf

 

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田路和幸(とうじ かずゆき)

理学博士/東北大学大学院環境科学研究科教授(2010年度から4年間、研究科長)/NPO法人環境エネルギー技術研究所 理事長

ナノ素材とそのエネルギーデバイスへの応用に関する研究により2008年に文部科学大臣表彰 科学技術賞

「微弱エネルギー蓄電型エコハウスに関する省エネ技術開発(環境省)」「スマートビルDC/ACハイブリッド制御システム開発・実証(経済産業省)」「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト(文部科学省)」などエネルギー関連の研究開発プロジェクトのリーダーを務める。

▽こちらの本にも田路先生が直流ワールドについて書いておられます!