【直流ワールドへようこそ!】第5回 DIYに挑戦!直流を直流のままスマホに充電
第4回では、スマホへの充電を例に、直流ワールドづくりの基本について教わりました。
第5回では、電子工作初心者の編集スタッフが、実際にDIYに挑戦する様子をご紹介します。田路先生にアドバイスを頂きながら、材料の調達から始めます。
※記事中には、商品の目的外使用をしている場合があります。専門家のアドバイスを受けながら、十分注意した上で、自己責任で行っています。ご理解の程よろしくお願いします。
手順1.材料の調達
全部で5,000円以下を目指します。
【太陽光パネル】
第4回で教わったとおり、スマホの電圧5V以上の太陽光パネルを選ぶ必要があります。
また、太陽光パネルの価格は発電量(W)に比例します。
amazonで「太陽光パネル」で検索すると、発電量を基準に5W、10W、20W…100Wくらいまで、6000件以上出てきます。
電力量(W)=電圧(V)×電流(A)です。
「5W」の太陽光パネルだと、電圧5V×電流1Aとなり、ぎりぎりすぎるので、 「10W」で絞り込んでみると40件程度に。
次に、パネルには単結晶と多結晶があります。
一般的に発電効率が高いと言われる「単結晶」で絞ってみたところ11件に。
それらの製造元、電圧、電流などの詳細情報を見比べながら、スマホの電圧5Vよりも高い電圧で、販売元が日本の会社で、3,000円程度のものを選ぶことに。
▲選んだ太陽光パネルの裏面の表示:公称最大出力動作電圧:17.8V、公称最大出力動作電流0.56A
【USB充電モジュール】
次に、太陽光パネルからの電圧をスマホの耐圧以下に調整する部品と、USBケーブルと繋ぐ部品が必要です。
田路先生にご相談したところ、「USB充電モジュール」という商品を教えてくださいました。
amazonで「USB 充電モジュール」「DIYキット」で検索すると出てきます。
DIYキットなので簡単な組立て作業が必要ですが、なかなかの優れもの。
・電圧と電流を可変できる(降圧コンバータの役目)
・電圧と電流がわかる表示画面が付いている(マルチチェッカーの役目)
・ハンダ付けの必要がない
・USBの挿しこみ口とは別に、もう1つの口がある(材料を追加することでノートパソコン等スマホ以外の充電にも使えそう)
・iPhone特有のGND(グランド)の心配がいらない
これらの機能があわさって1,000円ちょっと。
【USBケーブル】
ダイソーで売られているiPhone対応と書いてあるケーブルを使ってみることに。
また、材料選びのコツを田路先生に伺ったところ、amazonの口コミ等を見て購入後の対応や不良品にあたる確率をイメージすること、だそうです。
さて、材料がそろったら、組み立てです!
手順2:太陽光パネルの導線の下処理
太陽光パネルは、パネルの裏から出ている導線の先端が写真のようになっているので、ニッパーを使って、プラスとマイナスの導線をむき出しにします。(写真①~③)
ニッパーを使い慣れていないので、導線も一緒に3、4本切ってしまいました…
手順3:USB充電モジュールの組立
USB 充電モジュールのDIYキットには、基盤、アクリル板、ネジが入っています。(写真上)
アクリル板には汚れや傷防止の紙が貼られているので剥がします。(写真下)
基盤を2枚のアクリル板ではさむように、ドライバーを使ってネジ止めします。(写真①~④)
手順4:太陽光パネルの導線をUSB充電モジュールにつなぐ
一般的には黒い導線がマイナス、赤い導線がプラスです。
導線の差し込み口は、表示画面がある面の裏側にあります。
黒い導線(マイナス)の先をGND(グランド)と書かれた方に差し込みます。
上のネジをドライバーでくるくると回して絞めます。
ゆるいと導線が抜けてしまうので、しっかりと。
赤い導線も同様に、GNDの隣側に差し込んでネジを締めます。
ハンダ付けの必要もなく繋ぐことができます。
手順5:充電開始、でも、ちょっとその前に…
この日はとても天気が良く、雲ひとつない空でしたので影がくっきり。
写真のように、太陽光パネルに少しでも影が出来ると、電圧が下がり充電されません。
手順6:USB充電モジュールの出力電圧と電流の調整
▲左が出力電圧を変えるネジ、右が出力電流を変えるネジ。
太陽光発電は、負荷がなければ発電しませんので(スマホを繋げなければ電流が流れませんので)、実際には、スマホを繋げて表示画面に電圧値等が表示されてから、ドライバーを使って、ネジを右に回して徐々に大きくします。
USB充電モジュールを上手く調整できたら、充電が開始されます。
写真左:入力電圧19.6V
写真中央:上は出力電圧5.21V、下はUSbの文字
写真右:上は出力電圧5.24V、下は出力電流0.81A
入力電圧は太陽光パネルから充電モジュールに入ってくる電気の電圧、出力電圧は充電モジュールから出ていく(スマホに入る)電気の電圧です。
充電を開始して、しばらく離れてから戻ってみると…
スマホの画面にこんなメッセージが…!
スマホを冷蔵庫に数分入れて冷ましたらメッセージが消えました。(汗)
スマホが影にかくれるようにノートと重石をのせて、充電再開。
●充電結果
10:46(1%)→ 12:00(67%)
約1時間15分で66%アップしたので大満足です。
充電速度も大満足だったのですが、一度DIYしてみると、かなり理解が深まることを実感。
理解が深まると面白くなります。
そして、もう少しサイズの大きな直流ワールドに挑戦してみようかな…!蓄電池を使ってみようかな…!などと、欲が出てきます(笑)
こどもと一緒にやったら、電気について楽しく学べるかもしれません。
田路先生によると、スマホより大きな電圧の機器に直流給電する場合、太陽光パネルを「直列」に繋いで足していけばいいのだそうです。
回路の繋ぎ方には並列と直列がありますが、直列につなぐことで電圧があがります。
足していく作業はそれほど難しくなく、接続箱を使って出来るとのこと。
最初から大きな出力の太陽光パネルを準備しなくても、買い足しでパワーアップしていけるので、無理のないところから始められるというわけです。
直流(DC)の利点をいかしたDC家電、DCルーム、DCハウス、DC○○…
エコで非常時の備えにもなって私たちの暮らし方を変えるような、そんな新しいデザインの「何か」が生まれることを期待して、今はDIYでの直流ワールドづくりを楽しむことにしましょう。
(つづく)
「連載:直流ワールドを広めよう!」へのご感想・ご質問など、皆様からのメッセージをお待ちしています。
編集部 info@sftee.or.jp
<第4回 スマホに充電してみたい!基本の直流ワールド
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田路和幸(とうじ かずゆき)
理学博士/東北大学大学院環境科学研究科教授(2010年度から4年間、研究科長)/NPO法人環境エネルギー技術研究所 理事長
ナノ素材とそのエネルギーデバイスへの応用に関する研究により2008年に文部科学大臣表彰 科学技術賞
「微弱エネルギー蓄電型エコハウスに関する省エネ技術開発(環境省)」「スマートビルDC/ACハイブリッド制御システム開発・実証(経済産業省)」「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト(文部科学省)」などエネルギー関連の研究開発プロジェクトのリーダーを務める。
▽こちらの本にも田路先生が直流ワールドについて書いておられます!