【直流ワールドへようこそ!】第10回 暮らしに役立つ!消費電力の見える化(③ミニマムな蓄電池)

第9回では、編集部スタッフの家の消費電力のグラフを東北大学大学院環境科学研究科 田路教授(以下、田路先生)に見て頂きながら、ミニマムな太陽光発電について考えました。
第10回では、ミニマムな蓄電池について考えます。

POINT3.バックアップ用のミニマムな蓄電池について考える

もしもの時に備えて、電気を貯めておきたいと思ったら、蓄電池が必要になります。
現在、身近な蓄電池といえば、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池の3種類があります。
〇鉛電池:自動車のバッテリー
〇ニッケル水素電池:ハイブリッドカーの動力源
〇リチウムイオン電池:携帯電話やノートパソコンなどの電気機器、電気自動車の動力源、住宅や小規模店舗やオフィスなど(補助金有り)

そのうち、住宅用などで普及しているのがリチウムイオン電池です。
価格は、経済産業省の資料によると2015年度実績で約22万円/kWhとなっていますが、日々、技術開発が進んでいて、目標として2020年度9万円以下を目指す、とあります。
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/energy_resource/pdf/004_09_02.pdf

そこで、田路先生とのお話の中で、蓄電池導入の考え方のヒントを探ります。

編集部スタッフ:
「太陽光発電で発電した電気をリアルタイムに使うのではなく、貯めておくには蓄電池が必要ですよね。」

田路先生:
「そうだね。バックアップ用に蓄電池を、と考える。そして、蓄電池のためにいくら払えるか、ということになってくる。」

編集部スタッフ:
「そうなんです。蓄電池はかなり高額です。」

田路先生:
「ただ、必ずしも大きな蓄電池が必要とは限らない。例えば、これで100W。」

田路先生によると、Amazonでは14,000円くらいで購入できるものだそうで、入力方法は太陽光パネル、ACアダプタ、カーチャージャーの3WAY、出力方法は、2口USBポート出力:5V/3.1A(最大)、3口DC出力:9~12.6V/15A(最大)、2WAY AC出力:100W以下のほぼすべての製品に充電可能な商品とのこと。
また、これは蓄電しながら放電できるという優れもの。
蓄電しながら放電できる仕様のものは、案外少ないそうです。
まずは、これくらいのスペックのものを1台という選択肢は、あるかもしれません。
小型蓄電池は、多数売られているので、品質の良いものを選びたいところです。

次に田路先生が見せて下さったのは電動アシスト自転車の蓄電池。
25.2V-12Ahと表示されているので25.2×12→300Wくらいです。

田路先生:
「これが使えたら経済性が出てくる。」

編集部スタッフ:
「電動アシスト自転車の蓄電池?!」

田路先生によると、電動アシスト自転車の蓄電池に、太陽光発電した電気を貯めたり、貯まった電気を取り出して使えるようになれば、エネルギーシステムの一部として機能するし、それが直流で出来たら、変換ロスがないエコなエネルギーシステムになるとのこと。
ただ、現在は、そのような商品はなく、DIYで簡単に出来るものでもないようです。

電動アシスト自転車といえば、今やかなりの普及率。
編集部スタッフが普段使っている駐輪場を見たところ、幼児を乗せるタイプの自転車のうち7〜8割が電動アシスト自転車です。
経済的でエコで使い勝手の良い「Bicycle to Home」が登場したら、蓄電池のある暮らしが、いっきに身近になりそうです。

一方、電動アシスト自転車の蓄電池をポータブル電源として使えるようになるサイバシ(サイクルバッテリーシステム)という商品があります。
サイバシには電動アシスト自転車の蓄電池を設置する部分があり(全ての蓄電池が使えるわけではない)、出力側には、AC100Vコンセント、USBなど数種類のケーブル差し込み口があり、ノートパソコンやスマホの充電、LED電球に使えます。
公式ウェブサイト(http://saibasi.com/)によると、国内主要3メーカーの電動アシスト自転車の蓄電池に対応していて、例えば、12Ahの蓄電池の場合、ノートパソコン(約80W)を約3時間使うことが出来き、スマホは約40回充電でき、照明(20W)は、約12時間点灯させられるようです。
なお、価格は9,500円~14,000円くらいで、電動アシスト自転車をお持ちの方であれば、非常時用のアイテムとして使い勝手が良いかもしれません。

最近、欧州や中国においては、ガソリンやディーゼルなど化石燃料を使用する自動車を、将来的に電気自動車へ切り替えると発表されました。
日本においても、電気自動車は、次世代の電力網を構成する要素のひとつとして重要視され、電力システムへの利用の仕方について、様々な実証試験等が行われています。

日々の暮らしの中で、社会全体のことをイメージするのは難しいけれど、自分の家の消費電力のグラフを見ながら、無理しない無駄のないミニマムなエネルギーシステムについて、考えてみるのはいかがでしょうか。

(つづく)

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田路和幸(とうじ かずゆき)

理学博士/東北大学大学院環境科学研究科教授(2010年度から4年間、研究科長)/NPO法人環境エネルギー技術研究所 理事長

ナノ素材とそのエネルギーデバイスへの応用に関する研究により2008年に文部科学大臣表彰 科学技術賞

「微弱エネルギー蓄電型エコハウスに関する省エネ技術開発(環境省)」「スマートビルDC/ACハイブリッド制御システム開発・実証(経済産業省)」「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト(文部科学省)」などエネルギー関連の研究開発プロジェクトのリーダーを務める。

▽こちらの本にも田路先生が直流ワールドについて書いておられます!